2015年6月20日土曜日

平河町ミュージックス第32回 片岡詩乃&久一忠之&大植圭太郎&近藤孝憲  「おとで夜遊び」片岡詩乃となかまたち を聴いた

公演前夜
片岡詩乃(ハープ)と、
3人のなかまたち、
久一忠之(パーカッション)大植圭太郎(オーボエ)近藤孝憲(フルート)
がそれぞれの響きを たしかめていた。



開演
近藤のフルートの澄んだ音に
片岡のハープが重なり、
大植のオーボエが呼吸をはじめる。
清らかで心地よい響きで空間が一気に満たされる。
ベルリオーズ:キリストの幼時(FL,Ob,Harp

近藤に久一のパーカッションが小気味のよい相づちを打つ。
聴衆はくりかえす旋律に身をゆだねる。
ジョリヴェ: ピホーベック、 130 (Fl,Perc)

片岡が高橋悠治氏に作曲を委嘱したハープソロ曲、
アイリッシュハープの弦に片岡の指が触れ、
一弦ごとに深いゆらぎを伴った音をはじき出す。
高橋悠治:そしてまた…

ハープのとなりにオーボエとフルートが並んだ。
ガラスの外の見慣れた街の夜景の動きが、
つぎつぎと繰り出される聴きなれない響きと混ざり合う。
現実と夢想のはざまで、
武満徹の音の魔術が空間を支配する。
武満徹:ユーカリプス (Ob,Fl,Harp)

休憩のあと
久一がひとり、小太鼓に向き合った。
木のスティックからはじまり、
手のあらゆる部分、ブラシなどを超絶技巧であやつり、
すさまじいほどの音の破片をたたきだす。
静寂が戻った時、客席から「ブラヴォー!」の声が飛んだ。
・アレクセイ・ゲラジメッツ:アスヴェンチュラス (Perc)

激しいドラムの余韻が残る中、
オーボエとハープが並んだ。
一転して優美な響きに聴衆を引き込む。
ドビュッシー :「オーボエとハープのための5つの小品」より(Ob,Harp)
         プレリュード(ベルガマスク組曲)、
         ヒースの荒野(前奏曲集第二巻)、
         アラベスク第2番

現代的な旋律から、中世の民謡風、三拍子系の舞曲へと
フルートの響きにオーボエが絡み合いながら、
3つの小品が軽快に うつろいでいく。
ボサ: フルートとオーボエのための3つの小品(Fl,Ob)

ピッコロは中国の竹笛、大太鼓はインドの太鼓、ハープはまるで箏のように、
西洋楽器本来の音とは違う音が縦横無尽に飛びかう。
編み出される音の一音一音に驚きながら、聴き入る。
そして、鳥肌が立つ。
タンドゥン: イン・ディスタンス (Ob,Picc,Perc,Harp)

大きな拍手に包まれた。
アンコール曲は、ふたたび4人がそろった。
美しい旋律が空間を清めるように漂った。
ショッカー:セプテンバー・モーン

すでに平河町ミュージックスで
ヴァイオリンの漆原啓子と共演したことのある片岡、
今回は、3人のボーイフレンドを引き連れての再登場。
難易度の高い楽曲を織り交ぜながら、
はじめてのユニットとは思えない見事なハーモニーを奏でた。

片岡となかまたち の創り出す響きは、
「おとで夜遊び」 にふさわしく、とても自由闊達で伸びやか。
そして、あまりにも多彩な音に彩られていた。
聴衆は、かれらの遊び場 に足を踏み入れ、
まるで夜遊びをともに楽しんでいるようでもあった。




平河町ミュージックス実行委員会ワーキンググループ   木村佐近