2011年10月22日土曜日

平河町ミュージックス第10回公演    松田美緒・北村聡  CANTO LIBRE  を聴いた

公演の前夜、
初秋の肌寒さを感じながら、
セーターに身を包んだ松田美緒と
バンドネオンを抱えた北村聡が
空間の響きを確かめていた。













公演当日、
ガラスのそとは、小雨模様。
北村のバンドネオンの音色が
湿り気をおびた空気を震わせた。
松田のうたが始まる。





何と、松田が客席を背にして、
ガラスの外に向かって、うたい始めた。
こえの粒が、ガラスに跳ね返り、
白い空間に舞い散った。
不思議なひとときが流れた。





「作りすぎたり、リバーブをかけ過ぎたりはしたくない。
自然に聴き手に届いてほしいと思っている。」
そう語っていた松田は、
椅子に身をゆだねて、なめらかにうたう。





休憩時間のざわめきが静まり、
中二階の上から、うたごえが降りてきた。
自然で美しい アカペラ が、
空間を満たした。






バンドネオンを愛おしく抱えながら
北村が小沼純一の問いに答える
「バンドネオンの魅力解説」も
聴衆をひきつけた。






そのバンドネオンとともに、
北村が中二階に移動して弾く。
さらに、
松田がそれに、こえを重ねる。






中二階の北村と、1階に降りた松田の
響きのやりとり。
どの場所でうたうこえも、
しっかりと空間を響かせる。






最後のアンコール曲は、
聴衆の中をめぐりながら。
聴衆の目と耳が、
歌姫を追う。







松田は、世界中を駆け巡り、
そのうたごえには、
彼女が旅する様々な地域の魂が宿ると言われている。
あっけらかんと、笑う素直な笑顔の向こうにも、
その魂を垣間見たような気がした。
そしてまた、ここで、そのうたごえを聴いてみたいと思った。


平河町ミュージックス実行委員会ワーキンググループ   木村佐近