2011年1月27日木曜日

ポスター

 昨2010年の秋、『ポスターを貼って生きてきた。』という本がでました。
著者は笹目浩之。
ポスターハリス・カンパニー代表取締役、とあります。
三沢市寺山修司記念館の副館長もされています。

本書は、笹目さんが寺山修司の芝居に出会い、
演劇の世界に携われたら、とのおもいから、
芝居のポスターを飲食店に貼るというしごとを始めて-----
との自伝的な部分が七割。
そのあとに、2つのおもしろい章がつづきます。
ひとつは「ポスターの意味」。
かんたんながらも、ポスターの歴史の概観、
80年代から90年代にかけて、演劇の世界がどう変わったか、
ポスターからチラシ、さらにはネットへと広報が変化し、
しかし、そうしたなかでもポスターならではの意味がある。
もうひとつは「ぼくが好きなポスターたち」。
横尾忠則、宇野亜喜良と粟津潔、戸田ツトム、
篠原勝之、平野甲賀、田中一光、といった名が、
状況劇場、天井桟敷、黒色テントの作品とともに登場します。

なぜこんなことを書いているか、というと、
もうじきこのホームページにもupされるかとおもいますが、
2011年春期HMSのデザインを見ることができたからです。
これまでのHMSのポスターもそうですけれども、
音楽の内容と、演奏者の名、楽器、とが
文字のかたちや配置とともに、みごとに組み合わされています。
もちろん、
先に引いた、70-80年代を中心とする演劇のとは大きく異なります。
楽器による、いわば抽象的な音がくみあわされ、
ひとのあたまのなかで、べつのかたちをつくりだす音楽は、
身体とことばが舞台に立つ演劇とは、対照的とも言えるでしょう。
いえ、だからこそ、です、
コンサートのポスターやチラシは、
音楽家のポートレートが中心になっているともいえます。
そうして具体性をだしてゆくことが多くなる。
でも、HMSのデザイン/ポスターはちがうのです。
ポートレートをだすことなく、ある意味シンプルで、抽象的にみえる。
それでいながら、よくみると、具体性がうかびあがってくる。
これは、デザイン/ポスターそのものが、
音楽のありようをあらわしている、ともいえるのではないでしょうか。

スタッフは、デザイナーの方が提供してくれるポスターを、
毎回、楽しみにしています。
そして、でてくるたびに、驚きます。
そうか、こんなことが、と。

御喜美江さんを中心とする3月のコンサートを控え、
デザインをみて、わたしは、個人的に、テンションのあがるのを感じていました。
そして、HMSのポスターは、チラシとはまた異なった何かを、
持っているにちがいない、と確信したのでした。

平河町ミュージックス実行委員 小沼純一