2014年7月19日土曜日

平河町ミュージックス第27回 大岡仁&植村太郎  ベルリンの響き  を聴いた

公演の前々日、
ベルリンから一時帰国した大岡仁と植村太郎が、
お互いの響きを丁寧に確かめ合っていた。
それは昼下がりから夕方まで、5時間余にも及んだ。





開演、
ヴァイオリンの絃に弓が触れた瞬間、
二人がベルリンから持ち帰った響きが、
一気に空間にひろがり、聴衆を包み込んだ。
6つのカノンソナタ/ テレマン作曲




二人は関西と名古屋で生まれ、
各々、国内外の大きなコンクールで優勝を経験し、
その場面や勉強会で幾度と出会い、
そして、いま偶然にもベルリンの空の下、
それぞれ目と鼻の先に住んでいる。
二人が、その奇遇について語った。





2台のヴァイオリンがふたたび響きはじめる。
彼らはリハーサルで、
スコアの解釈について何度も語り合い、
微調整を加えていた。
その積み重ねが つややかな響き となって現れる。
2台のヴァイオリンのためのデュオ ニ長調作品67-2/ シュポア作曲


次に控える難曲のソロ演奏に備え、
大岡が小休止に入った。
その間、植村が軽妙な語り口で
ベルリンでのエピソードを披露する。
彼らの充実した日常の一端が見え隠れする。




静寂を切り裂くように
大岡のヴァイオリンが鳴りだした。
作曲家がわずか6分ほどの楽章に込めた情念が、
まるで 弓に乗り移り、絃を震わせているようだ。
無伴奏ヴァイオリンソナタ第3番ニ短調作品27-3「バラード」/ イザイ作曲




そしてふたたび2台のヴァイオリンがならんだ。
3台以上の楽器で演奏するときは、相補いあうことができるが、
2台での演奏は、一人ひとりの音がそのまま素直につたわるので、
二人の高度な集中力が必要だと、演奏のあと植村がつぶやいていた。
そう言いながらも、彼らは、実に見事に息を合わせ、
お互いにとても楽しそうにヴァイオリンを響かせる。
その楽しさが聴衆にも素直につたわってくる。
2台のヴァイオリンのためのソナタ ハ長調作品56/ プロコフィエフ作曲



鳴りやまない拍手に応えて、
2曲のアンコールを弾いたあと、
それぞれの弓を置いた。







20代の彼らの紡ぎだす響きには、
若い力強さが根底にある。






そして、お互いの奇遇を生かし、
真摯に学びあう姿勢は 響きの大きな成長をも予感させる。







若い力強さに加え、
共に学ぶ中で培われた美しい「ベルリンの響き」は、
聴衆の記憶に永くとどまるに違いない と思った。
そして、曇りのない彼らの笑顔の向こうに、
これからの日本の音楽界を担う才能を 垣間見たような気がした。






平河町ミュージックス実行委員会ワーキンググループ   木村佐近











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