2011年4月9日土曜日

平河町ミュージックス第8回公演 稲野珠緒  打つ“うた”、叩く“うた” を聴いた


木片を打ち鳴らしながら、






稲野珠緒、斎藤祥子、久米彩音、角銅真実が

中二階に架けられた階段に並んだ。

スティーヴ・ライヒの「木片の音楽」が

白い空間を小刻みに揺らす。

中二階の上からリズムが降る「ピアノ・フェイズ」のあと、

大きなテーブルに向かい合った稲野たちが、

手のひらを、打ち、叩く。

ティエリー・メイの文字通り「テーブル・ミュージック」。


日常の手のひらのしぐさから音楽が生まれる。



辻邦博のギターが加わる。

ルー・ハリソンの「ギターの為の作品集」を

弾き終えた辻が語る。

「演奏することはふつうのこと。

今の日本は震災でふつうを無くしている。

ふつうに演奏することで、ふつうを取り戻したい。」

その言葉は、ギターの余韻に重なり、聴衆の心に沁み入った。


4人の打楽器奏者の織りなす響きが、空気を変える。

ルー・ハリソンとジョン・ケージの共作による

「ダブル・ミュージック」は

多種多様な楽器からはじき出される

小気味の良いリズムが、空間に踊る。



ジョンケージの「リビング・ルーム・ミュージック」は圧巻だ。

テーブルに並んだ、カップや、フライパン、

洗濯物のたぐいまでが、

稲野たちの手で楽器に変わっていく。


続く渡邉達弘の「窓の外の色」も日常から生まれた美しい楽曲。




打楽器デュオのために書かれた「mander obedeciendo」は、

高橋悠治が

「それぞれの音色が混合せず交錯するアフリカ的合奏のかたち」

と記すように、情熱的な響き。




そして、ニコラウス・A・フーバー「クラッシュ・ミュージック」で

稲野が締めくくった。






それにしても、稲野の笑顔は素敵だ。
激しく楽器を叩くときも、強く打つときも、

稲野は体全体で楽しみ、笑みを浮かべる。

打つ、叩き、リズムを刻むことは、

ひとが古来持っている楽しみの一つ。

それを音楽に創り上げる稲野とその仲間たちから、

楽しさが美しい響きとともに伝わってくる。


今日は、元気をもらった。








平河町ミュージックス実行委員会ワーキンググループ   木村佐近

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