木片を打ち鳴らしながら、
稲野珠緒、斎藤祥子、久米彩音、角銅真実が
中二階に架けられた階段に並んだ。
スティーヴ・ライヒの「木片の音楽」が
白い空間を小刻みに揺らす。
大きなテーブルに向かい合った稲野たちが、
手のひらを、打ち、叩く。
ティエリー・メイの文字通り「テーブル・ミュージック」。
日常の手のひらのしぐさから音楽が生まれる。
ルー・ハリソンの「ギターの為の作品集」を
弾き終えた辻が語る。
「演奏することはふつうのこと。
今の日本は震災でふつうを無くしている。
ふつうに演奏することで、ふつうを取り戻したい。」
その言葉は、ギターの余韻に重なり、聴衆の心に沁み入った。
4人の打楽器奏者の織りなす響きが、空気を変える。
ルー・ハリソンとジョン・ケージの共作による
「ダブル・ミュージック」は
多種多様な楽器からはじき出される
小気味の良いリズムが、空間に踊る。
ジョンケージの「リビング・ルーム・ミュージック」は圧巻だ。
テーブルに並んだ、カップや、フライパン、
洗濯物のたぐいまでが、
稲野たちの手で楽器に変わっていく。
続く渡邉達弘の「窓の外の色」も日常から生まれた美しい楽曲。
打楽器デュオのために書かれた「mander obedeciendo」は、
高橋悠治が
「それぞれの音色が混合せず交錯するアフリカ的合奏のかたち」
と記すように、情熱的な響き。
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