2018年5月28日月曜日

平河町ミュージックス第46回 大地の薫り、清冽な音楽  ― 山形交響楽団首席奏者による弦楽四重奏 ― を聴いた 2018/5/24 


公演当日の夕刻、
山形から、髙橋和貴(ヴァイオリン)、舘野ヤンネ(ヴァイオリン)、成田寛(ヴィオラ)、小川和久(チェロ)の4人が、北欧家具と、山王祭を控えた平河町神輿 が鎮座する会場に現れた。

開演前には、山形交響楽団西濱専務理事と平河町ミュージックス佐野実行委員長による、曲目紹介と山響東京公演の話題で盛り上がる。

そして開演
いきなりモーツァルトの心地よい響きに包まれる。
なぜか ほとんどの聴衆が目を閉じて それぞれのモーツァルトの世界に浸った。
「劇場では目を閉じる観客はいないが、心地よい音楽会では目を閉じて聴くひとが多いのに驚いた・・・」と初めてこの音楽会を訪れた大学の劇場研究者が終演後に語ってくれた。
モーツァルト:弦楽四重奏曲第1番 ト長調 「ローディ」

一呼吸おいて
色濃い旋律が折り重なるように繰り返され、奥深い東欧のイメージに満たされた。
アラム・ハチャトゥリアン:弦楽四重奏のための二重フーガ

ヴァイオリン奏者の舘野ヤンネがフィンランドに帰省して、この演奏会のために持ち帰ってきたという楽譜。
その楽譜から立ち昇る聴きなれない旋律が、揺らぎと穏やかさの入り交じる北欧の空気感となって聴衆を翻弄する。
アウリス・サッリネン :弦楽四重奏曲第3番 「ペルトニエミ・ヒントリークの葬送行進曲の諸相」


休憩 のあと
聴きなれたドヴォルザーク。
四つの弦が織り成す美しい熟練の響きがのびやかに空間にひろがる。
アントニン・ドヴォルザーク :弦楽四重奏曲第12番 ヘ長調 「アメリカ」

大きな拍手がなりやまなかった。
終演後の余韻の中で、聴衆は四種類の山形ワインを楽しんだ。
山響の凄腕4人の四つの音とハーモニーを反芻するように。


山形交響楽団は地元山形でスクールコンサートなどを通じて、地域に根ざす活動を続けている。
その活動のありようと、山形の大地の薫りを感じる清冽なこの響きは 間違いなく山形の人々の誇りであり、心の拠りどころになり、そこに永く生き続けるに違いない・・・と思った。




平河町ミュージックス実行委員会ワーキンググループ   木村佐近

2018年1月27日土曜日

平河町ミュージックス第45回浅井咲乃(ヴァイオリン)& 姜 隆光(ヴィオラ) String Duo ~ヴァイオリンとヴィオラの二重奏で聴く名曲~ を聴いた 2018/1/26

公演当日の昼下がり、
連日の寒波で冷えきった平河町に、
浅井咲乃 と 姜 隆光 が大阪から到着した。
 

開演
ふたつの弦から 艶やかな音が絡み合うように響きわたり、
聴衆を包み込んだ。
I.プレイエル:ヴァイオリンとヴィオラの為の二重奏 第1番より1楽章

晴れやかな喜びに満ちたヴァイオリンの音色にヴィオラの穏やかな響きが重なる。
二つの楽器の特徴を語りながら、音を紡ぐ。
F.クライスラー:愛の喜び

ヴィオラの音色でピアソラを弾く。
「ヴィオラは人間の声に最も近いと科学的に証明された」とか・・姜が弾んだ声で語る。
A.ピアソラ:タンティ・アンニ・プリマ

いつもの聴きなれた「四季・冬」とは違った。
二つの弦だけで鳴らす「冬」の景色は、荒々しい木枯らしのようだ。
その新鮮さに鳥肌が立つ。
A.ヴィヴァルディ:「四季」より「冬」第1楽章

美しく心地よい旋律が、二つの弦の上を行き来する。
C.ドビュッシー:亜麻色の髪の乙女

プログラムにない曲を付け加えた。
おどろおどろしいゲーテの詩を思い浮かべながら聴く。
シューベルト:魔王

休憩のあと
誰もが知っているヤマトのテーマで後半の幕を開けた。
アニメのテーマも弦の生音で聴くとこんなにも素晴らしい!
宮川 泰:宇宙戦艦ヤマト

ゲーム音楽も 楽し気に弾きこなす。
近藤 浩治:スーパーマリオブラザーズ

プログラムにない曲をさらに弾く。
目を閉じると映画の場面が湧き上がってくる。
久石 譲:もののけ姫

美空ひばりが出てきた。
まるで歌うように、二つの弦が響き合う。
目頭が熱くなる。
小椋佳:愛燦燦

小気味の良いリズムで気持ちがはずむ。
それにしても、二人の弦さばきは圧倒的で、変幻自在。
マイケル・ジャクソンを弾き終えて、
「明日は、東京文化会館小ホールで復元古楽器を用いてクラシックを弾く」と紹介。
マイケル・ジャクソン:スムース・クリミナル

最後の曲は美しい古典曲で締める。
J.ハルヴォルセン:パッサカリア

そして、アンコールを2曲。
聴衆の心は、二人の響きに浸り 支配されていた。
プッチーニ:トゥーランドット/誰も寝てはならぬ
葉加瀬太郎:情熱大陸

浅井咲乃と姜隆光は、バロック音楽演奏を中心として
関西を拠点に活動するテレマン室内オーケストラの首席奏者であり、
復元古楽器とモダン楽器を弾き分けることのできる名手と言われている。
今日は、そのふたつの弦からジャンルを超えてはじけるような響きが溢れだし、
意外性に富んだ 理屈抜きで楽しいひとときとなった。
そして、現代曲と古典曲との境界は無いように思えてきた。



平河町ミュージックス実行委員会ワーキンググループ 木村佐近